金川耳鼻科皮膚科の金川久美副院長が執筆したダイキン工業のHPのコピーです。

ウィルス性疾患・真菌性疾患と環境

ウィルス性疾患

ここでは皮膚科の病気として日常的によく見られるきわめてありふれた、あるいは特徴的な疾患のみを取り上げます。

 

単純性疱疹

単純性ヘルペスウィルスによる皮膚・粘膜感染です。I型とII型に区別できます。I型はいわゆる“熱のはな”と言われ、口唇とその周辺に多く見られます。II型は性感染症として性器あるいは陰部に発症する場合が多いのです。感染様式は、皮膚・粘膜への直接の接触による感染がほとんどです。初感染後、神経節の神経細胞に潜伏感染し、一生涯保持されています。症状の再発の誘因として、発熱・ストレス・日光への暴露などがよく知られています。

治療は、現在ではよい飲み薬・塗り薬があるので早めに皮膚科に行くとよいでしょう。

 

水痘・帯状疱疹

水痘(水疱瘡)は水痘・帯状疱疹ウィルスの初感染によりなります。帯状疱疹も水痘と同じ水痘・帯状疱疹ウィルスの再活性化により生じたウィルス感染症です。水痘にかかった後ウィルスは神経節のサテライト細胞に感染し、数年から数十年の潜伏感染後に再発します。

帯状疱疹の症状は、左右どちらか一方の一定の神経支配領域に一致した皮膚に、いくつもの疱疹が帯状に配列するのが特徴です。発疹の出る数日から1週間前から神経痛様の疼痛や知覚異常が見られ、きわめて特徴的な症状が見られます。
治療は、早い時期に飲み薬を使用すると症状の悪化や帯状疱疹の痛みの悪化を押さえる事も可能です。

 

伝染性軟属腫

小児期によくみられるいわゆる“ミズイボ”です。スイミングスクールの普及の影響と、また同じウィルス群に属する種痘が廃止された事により免疫が低下したためミズイボは増えていると言われております。
治療はピンセットなどでつまみ取るのが一般的ですが、痛みを伴うため局所麻酔薬含有テープを使用する場合もあります。

 

尋常性疣贅

いわゆる“いぼ”です。直径数mmから1cm位までの表面が乳嘴状の角化性丘疹で、手足を主に四肢に単発あるいは多発します。顔では糸状に突出して成長し、足底では隆起せず足底疣贅と呼ばれています。

すべての症例に対して有効なかつ絶対的な治療法はありません。日本では一般的には冷凍凝固法が行われていますが、外科的切除・レーザー療法・抗ガン薬含有軟膏外用療法・ヨクイニンなどの内服療法なども行われています。自然治癒もありますが、一方では治療に抵抗し治療が長期化したり、再発を繰り返す症例も多いものです。

 

真菌性疾患

皮膚科として日常的に外来でよく見られる真菌性疾患:皮膚糸状菌症(白癬)・カンジダ症・マラセチア感染症に少しふれます。

 

皮膚糸状菌症(白癬)

昔から俗称としてよく言われていた“みずむし”、“ぜにたむし”、“いんきんたむし”、“しらくも”と言う、人の皮膚に寄生するカビがひきおこす皮膚病です。ただしこれらの俗称で呼ばれるものは白癬以外の皮膚病を含んでいることも多いようです。

現在では、足白癬・手白癬・爪白癬・体部白癬・股部白癬・頭部白癬というようにその場所の名前をつけて呼ぶことが多いのです。

日本での感染経路で最も多いのは、足白癬の人から床などに菌が散布されその菌が皮膚に付着し発病します。診断はその部位から皮膚や爪、毛等をスライドグラスに取りKOH液を1〜2滴垂らし顕微鏡で直接真菌菌体を証明します。治療はほとんどが抗真菌薬(いわゆる“みずむし・たむし”の薬です)の外用です。最近は1日1回の外用でよい薬が出ており塗りやすくなっております。ただ広範囲の体部白癬や爪白癬・頭部白癬は飲み薬が必要です。

日本ではその生活様式から家庭内での感染が多く、治療により早期に人への感染力が落ちるので、次の世代にうつして行かないためにも積極的に治療をするべきでしょう。

 

カンジダ症

カンジダは人の皮膚や粘膜に常在している菌です。これが高温・多湿の環境になると増殖するのです。寝たきりの人のオムツの中とか、肥満の人の間擦部位とか、赤ちゃんのオムツの中、水仕事の多い人の指間等です。検査はやはり直接検鏡で、顕微鏡で確認します。治療の大半は抗真菌薬の塗り薬でよくなります。赤ちゃんなどはその部位を清潔に保ち、乾燥させるだけでもよくなってゆきます。

 

マラセチア感染症

でんぷうと呼ばれる皮膚病が一番ポピュラーです。マラセチア菌は皮膚の常在菌で暑い季節・地方に多く発症しています。またオイリィな皮膚で増殖しやすいと言われております。その部分の皮膚の直接検鏡で確認します。治療はほぼ抗真菌薬の外用です。2〜3週間で治癒しますが非常によく再発します。

 

ウィルス性疾患・真菌性疾患と環境

各々皮膚科で日常的によく見られる疾患のみにふれてみました。ウィルスも真菌も空気中に浮遊する場合も見られ、特に真菌などは浮遊アレルゲンとして喘息などの発作を誘発することもあります。エアコン等のフィルターはまめに掃除をしましょう。また空気清浄機などを使用されるのもよいでしょう。家族にみずむしの人がいるなら、他の人にうつさないよう早く治療してください。

著者プロフィール
金川耳鼻科皮膚科副院長
皮膚科
金川 久美
(かながわ ひさみ)
日本皮膚科学会会員
日本臨床皮膚科学会会員
日本美容皮膚科学会会員
本美容外科学会会員
神戸大学医学部卒
兵庫医科大学皮膚科学教室入局

兵庫県宝塚市山本にて
金川耳鼻科皮膚科を開院、現在に至る。

院長 耳鼻科 金川 清人
副院長皮膚科 金川久美