金川耳鼻科皮膚科の金川久美副院長が執筆したダイキン工業のHPのコピーです。

アトピー性皮膚炎と環境

今回は皮膚科医にとって、非常に重い疾患のひとつです。
アトピー性皮膚炎は遺伝性・湿疹性の皮膚病です。大多数の人は乳児期に発病し、季節的によくなったり悪くなったりを繰り返しつつ慢性に経過します。乳児期のアトピー性皮膚炎の大半は幼小児期に軽快ないし治癒しますが、成人期まで持ち越す人も少なくありません。

 

病因

アトピー性皮膚炎の発症には、遺伝因子と環境因子が関与しています。遺伝様式は常染色体優性遺伝にほぼ一致するといわれております。

アトピー性皮膚炎の皮疹形成にはIV型アレルギーが関与していると考えられています。その抗原物質には経皮的に吸収されるもの・経口的に摂取されるものがあります。

生まれつき乾燥性皮膚(dry skin)であることが多く、dry skinは表皮からの水分の蒸散量が多く・各層細胞間脂質セラミドが減少し・皮膚バリア機能が低下します。そのため種々の刺激物質や抗原物質が皮内へ容易に進入して皮膚炎を起こします。

 

増悪因子

本症は遺伝因子に環境因子(様々な増悪因子)が加わり発症・悪化します。また増悪因子にはアレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。

経皮的増悪因子としては、あせ・あか・ふけ等の皮膚の汚れや、塗り薬・化粧品・日常生活内の刺激物質があります。

経口的増悪因子としては風邪薬などの薬剤・食物等があり、その他の増悪因子として気候・ストレス・不適切な治療等が考えられます。

 

症状

アトピー性皮膚炎のかゆみは発作的に激しくなることが多く、かゆみのためかきむしり→皮疹が悪化→かゆみが増し→またかく、という悪循環を繰り返す事が多いのです。

乳児期(2歳未満):頭部、顔面に初発します。生後1〜2ヶ月頃から顔に赤みやプツプツが出現し、よくジュクジュクした状態になります。月齢が高くなると、体・手足にも出現してきます。

幼少児期:全体的に乾燥性の肌となります。急性ないし慢性湿疹のいろいろな症状が見られ、色素沈着や色素脱出もみられます。

思春期〜成人期:上半身に強い皮疹がみられます。

 

治療

アトピー性皮膚炎は遺伝素因を背景に発症するので現在のところ完治は困難で、コントロールしていく疾患です。慢性疾患の多くは、日常生活に支障のないレベルに病気をコントロールし、合併症なく普通の生活が出来ることが治療の目標です。結論として、ありふれた通常の治療により、多少の発疹やかゆみがあっても普通の人と同じ生活が出来ることが当面の治療のゴールだと思っております。

 

治療の基本として

●ステロイド外用剤

20世紀末に副作用の問題で色々たたかれた薬です。
ただこの薬は歴史も長く、ある意味で良さも悪さも知り尽くされた薬です。種類も優しいものから、とてもよく効くものまであり、年齢と外用の場所と、皮疹の状態によって使い分ければほとんど副作用なく使える薬です。

 

●免疫抑制外用剤

21世紀初めに我が国でタクロリムスが開発されました。ステロイド外用剤とは長所も短所も全く異なりますので、皮膚科医としては選択肢が増え、特に成人型アトピーの顔面の赤ら顔のコントロールがやりやすくなりました。

 

●スキンケア

1.日常生活で肌の刺激をさけるような生活指導

2.肌の清潔を保つための入浴指導

3.ドライスキンに対する保湿剤の外用

 

●抗アレルギー薬の内服

これらが皮膚科医のアトピー性皮膚炎に対する治療の中心になると思います。

 

アトピー性皮膚炎と環境

このようにアトピー性皮膚炎は環境にかなり作用される病気であることが解って頂けたと思います。部屋の掃除をよく行い、エアコンのフィルターなどにも気をつけ、ダニ抗原を減らすのも大切でしょう。空気清浄機や冬の乾燥には加湿器なども使用されるのも良いでしょう。衣類なども刺激の少ないものを選ばれる方が良いと思います。アトピー性皮膚炎のかたは、環境を整え、スキンケアに気をつけて、適宜必要な外用剤と抗アレルギー薬の内服によってより快適な生活を送る事が大切だと思っております。

著者プロフィール
金川耳鼻科皮膚科副院長
皮膚科
金川 久美
(かながわ ひさみ)
日本皮膚科学会会員
日本臨床皮膚科学会会員
日本美容皮膚科学会会員
本美容外科学会会員
神戸大学医学部卒
兵庫医科大学皮膚科学
教室入局

兵庫県宝塚市山本にて
金川耳鼻科皮膚科を開院、現在に至る。

院長 耳鼻科 金川清人
副院長皮膚科 金川久美